大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておられる妊娠・授乳~日本産婦人科学会より 

大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておられる妊娠・授乳
中女性へのご案内 (続報)

平成23 年4 月18 日
日本産科婦人科学会

放射性物質による軽度汚染の長期化が懸念されています。
この場合には特に軽度汚染飲料水や食物を長期間摂取することによる体内での被曝(内部被曝)
が心配されます。
この点について比較的よく研究されているヨウ素(I-131)について学会の見解を示します。

ただし現在のところ、ヨウ素(I-131)による大気汚染は減少し続けており、ほんの一部の地域を除いてヨウ素(I-131)による水道水汚染はありません。
ヨウ素(I-131)を一気に噴出するような新たな爆発が起こらないかぎり、ヨウ素(I-131)を含んだ水道水や野菜による健康被害を心配する必要はなさそうです。

ただし、ヨウ素(I-131)による海洋汚染は現在
も持続しています。
今後の海水汚染の動向には注意が必要です。

以下に示す例は、最大危険時等を想定した、連日、比較的高いベクレルを
含んだ飲食物を摂取するとした場合であり、現実的には3 月15 日にあったよう
な爆発(放射性ヨウ素を一度に大量噴出した)が繰り返されなければ、起こら
ない場面を想定しています。(最大危険時を想定した食事内容とその時の被曝量を末尾に
表示しています)

1. 内部被曝について

飲食物として摂取されたヨウ素(I-131)は甲状腺に集まりやすいという性質が
あります。そのため、甲状腺は摂取されたヨウ素(I-131)量に応じて他の臓器
より実質的に高い放射能にさらされることになります。

甲状腺の被曝量(mSv,ミリシーベルト)と摂取したベクレルとの関係は以下のように計算されます。
甲状腺への集まり易さを加味した計算式です。
大人の場合:ベクレル量×0.00032
乳児の場合:ベクレル量×0.0028
胎児の場合:ベクレル量×0.00047 (ここのベクレルは母親の摂取量)

例えば、成人が1 リットルあたり100 ベクレルの水を毎日1.0 リットル、100
日間飲み続けた場合、摂取総ベクレルは100×1.0×100=10,000 ベクレルとな
り、その間の甲状腺被曝量は10,000×0.00032=3.2mSv (ミリシーベルト)とな
ります。

乳児の場合に、1 リットルあたり100 ベクレルの水で溶かした粉ミルクを連
日0.8 リットル(800 ミリリットル、あるいは800 cc)、100 日間飲み続けた場
合、摂取総ベクレルは100×0.8×100=8,000 ベクレルとなり、その間の乳児甲
状腺被曝量は8,000×0.0028=22.4mSv (ミリシーベルト)となります。

胎児の場合、母親が1 リットルあたり100 ベクレルの水を毎日1.0 リットル、
100 日間飲み続けた場合、胎児甲状腺被曝量は10,000×0.00047=4.7mSv (ミリ
シーベルト)となります。

2. 安全な甲状腺被曝量について

安全を見込んで、許容される年間あたりのヨウ素(I-131)による総甲状腺被曝
量は成人、乳児、ならびに胎児を含め50mSv とされています。

ここでは、50mSvのうち、水から11.1mSv、野菜から11.1mSv、乳製品から11.1mSv、その他の
食品から11.7mSv、大気から5mSv 摂取すると仮定します。

3. 成人が安全に飲むことのできる水の量について

年間に許容される飲料水からの総ベクレルは11.1(mSv)÷0.00032=34,688 ベ
クレルです。1 日、1 リットルあたり100 ベクレルの水を1.0 リットル連日のみ
続けた場合、347 日で安全を見込んだ11.1mSv に達することになります。

4. 妊娠婦人が安全に飲むことのできる水の量について (胎児の安全を加味して)

妊娠婦人がヨウ素(I-131)を摂取した場合、ヨウ素(I-131)は母親甲状腺より
胎児甲状腺に、より集まりやすくなります。

したがって、胎児の安全を加味した場合、妊娠婦人が安心して飲める水の量は他の成人に比べて、約30%ほど少
ない量となります。

1 日、1 リットルあたり100 ベクレルの水を1.0 リットル連日のみ続けた場合、約236 日で母親の飲水による胎児甲状腺被曝量は11.1mSvに達することになります (100 ベクレル×0.00047×236=11.1mSv)。


5. 粉ミルク栄養の乳児の場合

仮に栄養のすべてを粉ミルク(汚染されていないと仮定)から摂取している乳
児の場合、野菜などからの摂取はありませんので、粉ミルク(軽度汚染飲料水
で溶かした)からの甲状腺被曝量は45mSv 程度まで許容されます。

その場合、年間に許容される粉ミルクからの総ベクレルは45÷0.0028=16,071 となりま
す。1 リットルあたり100 ベクレル含む水で溶かしたミルクを0.8 リットル連日
のみ続けた場合、200 日で安全を見込んだ乳児甲状腺被曝量45mSv に達するこ
とになります。


6. 野菜からのヨウ素(I-131)摂取について

年間に許容される野菜類からのヨウ素(I-131)による甲状腺被曝量は11.1mSv
とされています。これは野菜に含まれる総ベクレル34,688 ベクレルに相当しま
す。

仮に1.0kg あたり2,000 ベクレル含んだ野菜を連日、300g(1,000g=1.0kg)
食べ続けた場合、58 日間でこの量に達します。ただし、野菜が含んでいるベク
レル値は出荷当時の数値ですので、1 日あたり1 日前の値(ベクレル)に比して
ベクレルは約9%減少し、また水洗いによりかなり減少するので、実際には、も
っと長期間安心して食べることができます。

ただし、土壌汚染により野菜内に取り込まれたヨウ素(I-131)については洗い流すことはできません。

7. 魚介類などからのヨウ素(I-131)摂取について

年間に許容される肉、魚介類、穀類(水、野菜、乳製品以外から)からのヨウ
素(I-131)による甲状腺被曝量は11.7mSv 程度とされます。

これは、36,563ベクレルに相当します。
仮に1.0kg あたり1,000 ベクレル含んだ魚介類100g と1.0kg あたり200 ベクレル含んだ穀類を連日300g 食べ続けた場合、毎日160ベクレル摂取することになり、229 日間でこの量に達します。

ただし、これらが含んでいるベクレル値は出荷当時の数値ですので、1 日あたり1 日前の値(ベ
クレル)に比してベクレルは約9%減少します(8 日間で半分になります)。

た魚介類は水洗いにより表面に付着したヨウ素(I-131)は減少します。


8. バランスを考えた食物摂取について

以上の計算は、水、野菜、乳製品、魚介類を含むその他の食品や大気のすべて
が一定以上汚染されたものしか入手できない場合を想定しての計算です。現在
のように大気汚染も軽度で水道水汚染もない環境下では、飲料水と空気からの
被曝がわずかなので、汚染の可能性を心配し魚介類や乳製品を遠ざけるといっ
た食行動はかえって健康維持のうえで問題となる可能性があります。

日本では野菜、乳製品、魚介類の出荷に関して厳しい基準値が設定されています。

バランスのいい食事をお勧めします。参考として、最大危険時を想定した場合の食
事内容について末尾に表示します。


9. ヨウ素(I-131)の半減期について

放射能活性を持ったヨウ素(I-131)の半減期は8 日間です。

例えば、1 リットルあたり100 ベクレルの活性を持ったヨウ素を含んでいる飲料水の場合、8 日
間放置すると、放射能活性が半分の50 ベクレルになります。

腐らないよう冷暗所(暗くて寒い所、例えば冷蔵庫の中に)に24 時間保存すると前日のベクレル
量から9%ほど低いベクレル量となります。

しかし、水道水中の消毒剤の効果も時間とともに切れてきますので、長期間の保存はお勧めできません。

長期間保存した水道水は一旦沸騰してから飲むことをお勧めします(殺菌するためです)。

参考
最大危険時を想定した1 日の食事内容(*/kg)と摂取ベクレル

水道水 100 ベクレル* 1.6 リットル 160⁑

野菜 2000 ベクレル* 300 グラム 600⁑

牛乳 200 ベクレル* 200 ミリリットル 40⁑

チーズ 200 ベクレル* 50 グラム 10⁑

魚介類 2000 ベクレル* 100 グラム 200⁑

肉・卵・その他 200 ベクレル* 500 グラム 100⁑

穀類 200 ベクレル* 300 グラム 60⁑

この場合の1 日あたりの飲食による総ベクレル 1170⁑

摂取したベクレルの総量に0.00047 をかけると胎児甲状腺被曝量(mSv)になる。

摂取したベクレルの総量に0.00032 をかけると母体甲状腺被曝量(mSv)になる。

仮に1 日に1170 ベクレル摂取すると、胎児甲状腺被曝は1 日あたり0.55mSv となり、82 日間で
45mSv になる(残り5mSv の被曝は母親の大気から暴露を想定している)。

このお知らせを作成するにあたり、参考にした書物等は以下のとおりです。こ
こで示した数値が他の情報からの数値と少し異なる場合がありますが、その違
いはあまり大きいものではなく、根拠となる研究報告やどの程度安全性を見込
むかによって起こる数値の違いですのでご安心下さい。

1. Guidance: Potassium iodide as a thyroid blocking agent in radiation
emergencies. US Department of Health and Human Services, Food and
Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER),
December 2001 Procedural
2. Phipps AW, Smith TJ, Fell TP, Harrison JD. Part 1:Doses received in
utero and from activity present at birth in Doses to the embryo/fetus and
neonate from intakes of radionuclides by the mother. Contract Research
Report 397/2001
3. 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について. 平成14 年
4 月、原子力安全委員会、原子力施設等防災専門部会
4. 「放射性物質に関する緊急とりまとめ」2011 年3 月、食品安全委員会
5. 緊急時における食品の放射能測定マニュアル. 平成14 年3 月、厚生労働省
医薬局食品保健部監視安全課
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[2011/04/19 16:33] 助産師のつぶやき | TB(0) | CM(0)

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